人気ブログランキング | 話題のタグを見る

父と息子って 9

「…親父、肩車が好きなんですよ。子どもの頃、外を歩くときは、手をつないでもらうより肩車してもらうことのほうが多かったんです」
「いいですよねえ、肩車って。何かすごく、お父さんって感じがするじゃないですか。子どもを肩車するお母さんなんて、見たことないですもんね」
言われてみれば、確かにそうだ。
-中略-
昔の-30年以上前の僕も、健太くんのように父に肩車されていたのだ。おんぶよりもずっと高くて広い視野が、気持ちよかった。しっかりつかまっていないと後ろ向きに落っこちてしまう危なっかしさも、逆に気持ちが引き締まって、少し大人になった気分になれた。
-中略-
ああそうか、とつぶやきが漏れた。
「どうしました?」と橋本さんが訊いた。
「いや、あのね…ちょっと違ってたかもしれない、って」
「なにが違ってたんですか?」
「肩車のこと。親父が肩車を好きだったんじゃなくて、ほんとは、ぼくが肩車を好きだったんですよ」


「流星ワゴン/重松清」より

最近ぼくもchuを肩車することが多い。
「おとうさん、かたぐるま!」と肩車をせがまれると、うれしい気持ちになる。
すっかりchuも肩車され慣れて、ぼくもやりやすい。
肩車も、されるほうが、つまり子どもがうまくバランスをとってくれる必要がある。
ちょっとくらい重くなっても、バランスがいいほうがラクだ。

いつまでしてやれるかわからないけれど、小学生にあがってもできるようでありたい。

父親にしかできない事って、それくらいしかないかもしれないから。

「ほんと、父さんって肩車するの好きだったよなあ」って、大人になったchuに言われたいものだ。
「chuが好きだったから、してたんだ、せがんだのはお前のほうだよ」って、ぼくは答える。

by omori-sh | 2005-08-12 01:16 | book