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病気の利点

昨日、あわれ我がのどに紐ありきという話で自分で自分の首を絞めることについてちょっと触れたので、それに関連づけて。

この前読んだ本、「診療室にきた赤ずきん(物語療法の世界)/大平健」より。

しかし、病に倒れることや、入院することには利点はないのでしょうか。
長年医者をやってきて私は、利点はある、と思うようになりました。
私たちは日常の生活の中で、男や女、日本人、職業、家族などいろいろな条件に縛られています。
また私たちは自分の歴史、生い立ち、経験、考え方に縛られています。
こうした束縛は病気をすると少しゆるまります。
痛み、苦しみは現在の自分だけのものであって、過去の自分とは無縁ですし、人と共有できないからです。
私たちは病気になると、孤独な中でもうひとりの自分に直面せざるをえません。
私たちは自分が囚われていたものから解放されると同時に、生まれ落ちたときのような心もとないところに立たざるをえません。
言いかえれば、病気は私たちに自分を、自分の人生を見直すきっかけを与えてくれる機会でもあるのです。


ストレスを感じたとき、自分を見つめ直すきっかけだと思えたら、少し楽になれるってことはぼくも実感している。
そして医療者のひとりとしても、歯の治療に訪れる患者さんと接していて歯のトラブルであっても大平先生の言葉通り、自分の人生を見直すきっかけになるんじゃないかと思ってしまうことがある。

もちろん歯が悪くなるような場合、問題は歯のみにとどまることはまずないと言っていいと思う。
つまり、歯や口以外の健康面でも何らかのトラブルが自覚していないにしてもあるはずだ。
当然のことながら精神面の健康を含めないわけにいかない。
生活習慣にはメンタルの要素が非常に大きいのは明らかだ。

精神科の医師である大平先生のこの著書では、「物語療法」といって童話や昔話を用いて患者を癒す話が紹介されている。

精神科の先生のお話は、ぼくら歯科医にとってもすごく参考になる。
歯科医という医療人としてではなく、社会人として、親として、男として、自分の人生を見つめ直す上でももちろんだ。

たまに病気になるのも、悪くないかもしれない。

by omori-sh | 2006-05-13 19:13 | book