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スダジイ

去年、同窓会報の取材がきっかけで登山に連れて行ってくださったT先生から紅葉ハイキングのお誘いをいただき、うれしくってとんでいった。
前回の登山は兵庫県最高峰氷ノ山。
県内では珍しいブナの山。
氷ノ山からの帰り道、紅葉の時期にまた近くのハイキングコースにでも行きましょう、という話になっていて、去年の秋は実現しなかった。
それをずっと気にして下さっていたT先生、
「一年越しの約束を果たしましょう」ということで声をかけて下さったのだ。

本日のコースは神戸の街を見下ろす再度山周辺。
待ち合わせはデートスポットで有名なビーナスブリッジ近く駐車場。
8時に集合して歩く。

待ち合わせ場所は神戸の中心地から歩いても3~40分くらいの場所である。
でもすぐに登山道に入る。
これが神戸らしいところ。
海の北はすぐに山。

再度山山頂付近には弘法大師ゆかりの大観寺というお寺があって、お寺の参道をハイキングするかたちになる。
モミジのきれいなところだ。
平日なので人は少なくて、のんびり落ち葉を踏みしめながら。

1年ぶりに会ったけれど、ついこの間一緒にブナを楽しんだ気がする。
この1年間でぼくにもビックリするくらいいろいろなことがあって、ずいぶん環境が変わったけれども、こうして変わらない気持ちで会える人がいるというのはありがたいことだ。
T先生は東洋医学を勉強されていて、山を愛するちょっと風変わりな歯医者さん。

ぼくとしては何となく感性が通じるというか、一緒に山を歩いていて、ただひたすら会話もなく歩いているだけでもストレスを感じないので、T先生とはウマが合うような気がする。
16歳くらい年上なんだけれど。
「18年前、大学を辞めて親父の診療所を一緒にやるようになったけれど、ちょうどあの頃なんだなあ」

お寺の本堂にたどり着くと、そこは一面のイチョウの絨毯だった。
黄色いイチョウの葉がぎっしり。
赤いモミジに目が行きがちだけれど、黄色も美しい。

本堂の裏から山頂へ。
再度山は標高470mなので、わりとすぐに着いた。
でもハイキングではなく、れっきとした登山だ。

神戸で育ったなら一度は来たことがある修法が原(しおがはら)でまず一服。
ここで遊具を見つけた。
鉄棒があったので、おじさんふたりで鉄棒にぶら下がる。
ぼくは最近子どもたちと一緒に鉄棒にぶら下がる機会があるので自慢の技を披露。
まさかこんなところで鉄棒をすることになろうとは思わなかったけれど、何だか楽しい。

次は再度山のとなりの高尾山の山頂(476m)に。
さっき登ったのはあそこだよ、などと言いながら。
このあたりには野生のイノシシがたくさんいて、周囲はイノシシが掘ったであろう形跡だらけ。
結局イノシシには会えなかったけれども、イノシシがいることはわかった。

途中で道端に腰掛けておにぎりを食べた。
こういう時間もまたよし。
落ち葉でふかふかの土の上で紅葉を楽しみながら。

おにぎりは妻に頼んでつくってもらった玄米黒米入り。
T先生にも好評だった。

神戸では布引の滝~市が原がよく知られたコース。
今後のためにと市が原を視察。
子どもたちを連れてファミリーハイキングもいいだろうなあと思う。

大観寺に戻り、参道の傍らにそびえ立つ巨木を見上げて感心。
まっすぐに伸びる木もいいけれど、ぐねぐね曲がった大木は見応えがある。
直径1メートル以上の幹が株立ちになっているのだからスゴイ。

樹木の種は「スダジイ」。
樫の仲間でどんぐりのなる木だ。
「すだじい」という名前がぴったりの巨木。

この「すだじい」という響きが今日最も印象に残った。


神戸の街から山を眺めると、神戸市のマークといかりのマークが山に描かれているのが見える。
帰りはそれら「市章山」「錨山」を通って下りた。
市章山の展望台でT先生が入れてくれたホットココアをいただきながら、神戸の街を眺めていると、子どもたちや妻をココに連れてきてやりたいなあ、と思った。

最後はデートスポットのビーナスブリッジにT先生と2人で行き、デート気分を体験した。
そういえばぼくはココで夜景を眺めるというデートをした記憶がない。
いつかココで夜景を見るのもいいかなあ。

紅葉ハイキングということだったが、たいへんに歩きごたえのある山登りだった。

ただひたすら黙々と一歩一歩登る山登りというのは精神にとってもやすらぎを与えてくれることを理解した。
最近お寺やお経に少しばかり興味があるんだけれども、きっと座禅や写経に通じるんだろうなあと思う。
何となく、そういうことが空になる、ということなんじゃないかなあと感じるようになってきた。

久しぶりの山歩き、とても清々しい気持ちになれた。
誘って下さって、すべてコーディネートして下さったT先生には心から感謝。
ペースに合わせて臨機応変にコースを変えて下さったのだ。
このあたりを熟知されているからこそだ。
きっと一人だと道の不安があるから、こんなに楽しめなかったに違いない。
ありがたいこと。

「このあたりを歩くようになって何年くらいですか」
「40年くらいになるかなあ」
「どうですか、このあたりは昔に比べて変わりましたか」
「ものすごく変わったね。尾根道はそうでもないけれども、谷道は激変しましたね」

たった40年で変わり果てる時代にぼくらは生きている。
変化に歯止めはかけられないかもしれないけれども、いいもので残せるものは残していきたいものである。
人間自体の変化もだし、人と人とのつながり方も。

体はちょっと疲れたけれど、人のぬくもりに触れ、心はみずみずしくなれた気がする。

T先生、ありがとうございました!

by omori-sh | 2006-11-30 18:47 | episode