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二次医療機関

今日、二次医療機関(病院歯科口腔外科)に紹介した患者さんから電話があった。
どうも紹介した先でつらい思いをしてしまったらしい。
ちょうどエキブロ・メディカルで私にとっていい医師とはというテーマが掲げられていたので、トラックバック。(すでにコメント残したんだけど)

内科的(糖尿病)な問題で、去年の11月にとある病院に入院が決まったその患者さんとは、訪問診療のかたちで関わっていた。
そもそもケアマネさんからの紹介で、精神的にもやや不安定なのでよろしくということでご紹介をいただいた方。
よくよく聞くと、ぼくがとってもお世話になっている先輩の知人でもあり、なかなかの知識人。
ご主人を亡くされて、眺めのいい駅近のマンションで一人暮らし。

以前診察をしていた先輩の先生に尋ねると、
「オレがいままで診た中でもトップ3に入る『痛がり』やなぁ」だと。

もちろんそういうことは、話してると、何となく、伝わってくる。

入院直前、下の前歯が折れたので、何とかして欲しいと言われ、
治療をはじめた。でも、入院までには、間に合わない。
しかし、入院先の病院には、歯科口腔外科があり、しかも、そこの歯科部長の先生とは、
面識がある。
だから、事前に、電話でお願いした。
「院内紹介になると思いますが、ぼくが診させてもらっている○○さんがお世話になります。よろしくお願いします」
慎重にかかる心づもりをしておく必要のある患者さんであることも伝えた。

その後どうなったか、気にはなっていた。



「私は歯を抜いてもらうつもりはなかったんですが、抜かれちゃって…」
「そうなんですか…」(なんでだよ~)
「今からお伺いしてよろしいですか?タクシーで行きますから」
「お待ちしています…」

体調は、だいぶ回復しているようだった。

ちょうど、ぼくのアポイントには余裕があったので、じっくり話を聞くことに決めていた。
いつも、話し出すと、止まらないのだが。

担当医はぼくが電話で話した歯科部長のF先生ではなく、医長のU先生。
どうもU先生とうまくいかなかったらしい。
「私は、治療中の前歯を治してもらいたかったのに、左上の親知らずを抜きはって、血が止まらなくて、たいへんだったんです」
「それからその先生、私を診て下さらないんです」

紹介したのは、ぼくだ。確実に、責任がある。
U先生も、面識はないけど、大学の先輩だ。
「ぼくのほうから、F先生には、確認しておきますので…」
「いいんですよ、何もなさらなくて。狭い世界だから、先生にまで火の粉が飛んでしまったらいけないし」
そんな心配をして下さる。

そして、そもそも今日来られたのは、右下の親知らずがぐらぐらで、痛み出したから。
もちろん抜歯適応。以前、ぼくも「抜きましょうか」とすすめたことがある。
しかし、糖尿病の状態を、内科の主治医の先生に確認してからにしましょうね、と。

「こうして先生にお話ししていたら、少し楽になりました」
とおっしゃっていただけたので、助かった。

きっと、U先生も、医療人として、患者さんを助けたい、と思っているはずだ。
それでも、時として、このようなことになってしまう。
特に二次医療機関はそもそも「紹介」がある場合が多いわけで、
紹介元と患者さんとの関係も考慮する必要は、ある(と思う)。

U先生のことを責めるつもりは、ない。
ただ、気の毒だとは思う。もちろん患者さんに対して、そしてU先生に対して。

その人にとって、いい医師とは。
患者さんのこと、すべてわかるのは、難しい。
だから、厳密には、その患者さんの立場に立つことは、不可能かもしれない。
でも、わかろうとする姿勢が、たいせつなんじゃないかなあと思う。

わからないから、わかりたい。でも、わからない。

by omori-sh | 2005-03-23 02:24 | episode