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ロールケーキ

うちの診療所の前は大企業の社宅で、中には外国人の方がおられる。
奥さまが外国人だったりハーフだったり。
そうすると子どもはおのずとバイリンガル。

子どもはバイリンガルでもお母さんが日本語わからないと、日本語しかできないぼくは困る。
このむし歯は大したことないので、すぐに痛み出すことはないだろう、ということ、甘いものを制限しておけば進行を防ぐことができること、生え変わりまであと2年くらいで、進行しなければ治療はしなくてもすむ、という内容を英語でうまく伝えることができない。

情けないけれど、それが現実。
英語ができなくて困ることが何年かに一度しかないから、何とかしようとも思わず。
けど、もっと外国人の患者さんがお見えになると、変わるんだろうか。

外国人じゃなくても、いくら話しても通じない相手というのも少なくないんだけど。
言葉って、言語って、コミュニケーションって、難しい。
日々、壁にぶち当たってる。

でも、壁ばっかりでもないんだなあ。
今日来られた日本語が片言のフィリピン人女性はベトナム人女性のママ友の紹介で、通訳としてそのベトナム人の女性も一緒に来てくれた。
そういうのって、うれしいことなわけ。

噛み合わないのは入れ歯じゃなくて、会話というお年寄りだって、だんだんわかり合えることも多い。
もちろん噛み合わない入れ歯が噛み合うようになるのがきっかけだったりもするけれど。
打ち解けるって大事だ。

たまに甘いものを差し入れてくれる方がある。
歯医者さんに甘いものはどうかと思うけれど、と言われると、いえいえ、みんな好きですよと答える。
ぼくは好意は受け取る。

もちろん、だからといって依怙贔屓はしない(つもり)。
でも、好意はうれしい。
気持ちが伝わる。

大事なのは、気持ちなんだよなあ。
その気持ちが、ロールケーキだったりするわけ。
近所のお菓子屋さんが、届けてくれた。

ロールケーキ、弟も持ってきてくれた。
同じお店の。
重なるもんだね、こういうのって。

いいんですよ、重なっても。
うれしいんですよ、その気持ちが。
喜んで、いただきます。

by omori-sh | 2013-01-30 21:47 | episode