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リスクがあるのはわかるけど

親知らずって、厄介な場合がある。
ぼくは親知らずを抜く立場の歯科医で、しばしば尋ねられる。
「この親知らずは抜いたほうがいいですか?」

抜いたほうがいいでしょう、という場合が圧倒的に多い。
抜かないほうがいい場合はそういう疑問が生じること自体がまれだからね。
痛みがないから抜かなくていい、というわけじゃないのが親知らず。

痛んだり腫れたりしたなら、抜いたほうがいいに決まっている。
萌出時のみの痛みを除いて。
でも、親知らずの抜歯には、リスクを伴うこともある。

下顎管に近接していて、抜歯により下顎に麻痺が残るような場合がある。
そういうややこしいな、と思うと、ぼくら開業医は病院の口腔外科を紹介する。
そこで患者さんは再びリスクについて説明を受け、承諾して抜歯処置を受けることになる。

病院の口腔外科の歯科医は開業医では手におえない処置を請け負わざるを得ない。
ぼくらよりもプロとしての力量が要求される。
リスクがあっても、そのリスクを必要以上に強調し、患者さんをビビらせるのは適切ではないとぼくは思う。

リスクのある患者さんばかりを扱うので、リスクヘッジの技術も長けているだろうけれど、リスクに立ち向かう技術も相応であってほしい。
専門医のつらいところではあるだろうけれど。
それが嫌なら口腔外科の肩書を捨てたほうがいいんじゃないかな。

口腔外科でこんなこと言われたんだけれど、どうなんでしょう、と相談に来られた方と話していて、スペシャリストとしてのプライドについて、思うところがあった。
次の病院では、無事抜いてもらえるといいですね。
大丈夫ですよ、きっと。

by omori-sh | 2013-03-15 21:54 | create d.c.