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呼び捨て

37歳の今、お互いに名前を呼び捨てにできる相手がほとんどいないことに気づいた。
単に友だちが少ないということなのかもしれないけど、呼び捨てたり「お前」と言える相手は身の回りにいなくなっていることは確かなことだ。
そのことを呼び捨てられて実感した。

職業柄、おたがいを「先生」と呼び合うような場所にいるから、感覚が麻痺しているかもしれない。
独立すると自分がトップなので職場で呼び捨てられるなんてことはまずない。
なので、昨日、呼び捨てられて妙に新鮮でうれしかった。

ぼくの診療所に偶然患者としてやって来た中学の同級生のS
彼から飲みに誘われ、喜んで出かけた。
雨の中奥さんが運転する車で迎えに来てくれ、駅前へ。

サーフィンをやっているS、仕事は建築関係。
ぼくの診療所に来てくれ結構気に入ってくれたというか、どこか共鳴できるところがあったようだ。
普段はあんまり話さへんねんけど、と言いながら、今Sがまじめに考えていることを語ってくれた。

子どもの病気から教えられたこと、健康のこと、環境問題についてのこと。

「ポイ捨てしたタバコのフィルターが自然に帰るまでに何年かかるか知っとうか?」
「食べものには気を使うようになったなあ。防腐剤には気をつけなあかん」

環境汚染が行き着く果ては海であること。
波乗りをやっていると海の汚染に敏感になるという。

フィルターが分解されるのに100年かかることを力説し、水や洗剤や野菜についてのこだわりを「お前やったらわかってくれそうやから」と話してくれた。

ぼくの苗字を呼び捨てで連発し、笑顔で「ほんま、うれしいわ」と言いながらいろいろ教えてくれた。
こういうときはぼくも自然と自分のことを「オレ」と言い、Sのことを名前で呼び捨てたり「お前」と言いながら、自分の話をした。

「中学のときのomori-shのイメージのままやからうれしいわ」

中学3年のとき1年間同じクラスだったというだけなのだが、こうして20年以上経って偶然の出会いから意気投合できるというのがおもしろい。
お互いちゃんと年を取っているんだけれどもあの頃の感覚がちゃんと残っている。
今はじめて会った同い年の人に「お前」って呼べるようになるには何年かかるだろう。
いくら親しくなってもずっとなれないような気もする。

呼び捨てがこんなにいいものだったとは。
呼び捨て、実に気持ちいい。

by omori-sh | 2007-07-21 23:15 | episode