うれしい言葉
歯医者の仕事をしていて、うれしい瞬間というのがある。
小さなうれしいはいくつもあって、思いがけずうまくいったときや喜んでもらえたときがそうだ。
思い通りに歯が抜けたときとか、義歯がスムースに入ったときとか、子どもが上手にできたときとか。
その反対にうまくいかなくてストレスになるときもある。
まあ難しいことに挑戦してすべてがうまくいったらそれは難しいことではなくなるから、うまくいかないことがあって当然なんだけれど。
ぼくの力量など高々しれている。
うまくいかないことがあるから、うまくいったときうれしい。
そしてうまくいってうれしいときにはほぼ必ず喜びの笑顔がある。
喜んでもらえるとうれしい。
喜んでもらったあと、さようならとなるのがいい。
治療が一段落してほどほどによくなったら一旦さよならだ。
うれしいようなさみしいような。
「今度主人がお世話になると思います」という言葉を残してさよならしたご夫人がいた。
とても上品な方で、美しい女性。
夫婦で別々の歯科医院にかかっておられる人というのは意外と多い。
これまでの経緯が人それぞれだから当然だ。
ぼくのところはまだ開院してわずか1年そこそこなので、新しいもの好きかどこに行っても満足できない人か転居してきたばかりの人か、いずれにしても何かある人が多い。
ちょっとずつ喜んでくれた方の声を聞いて、という方が増えてくれるのをめざしている。
相性の合う人たちが集まってくれるに越したことはない。
先ほどのご夫人のような方に来てもらえるとおだやかな時間が流れるからいい。
たいしたことは何一つしていないのに喜んでもらえて最後にうれしい言葉を残して帰られたのだから最高だ。
夫婦間での紹介、ごくありふれたことのようだけれども、すごくうれしい。
by omori-sh | 2008-06-18 02:57 | create d.c.